HARRY BY THE SEA

HARRY、海辺で危機一髪

 HARRYは海辺のすべてが大好き。でも暑い日差しだけは大の苦手。ある日かつてないほど暑い日に、日陰を探しますがどこへ行っても邪魔者扱いされてしまいます。波打ち際で途方にくれていたとき、突然大きな波に飲み込まれ、体中に海藻がからみついて取れなくなります。その姿を見た周りの人たちは、怪物だと勘違いし大騒ぎに。そんなHARRYを見かけた海辺の係員は、捕まえて水族館に連れて行こうとします。HARRYは捕まえられてしまうのか?HARRYの運命は?!

 

レベル

とても易しい易しいやや易しいやや難しい難しい

 

読むヒント

 約32ページ。HARRYシリーズ全4冊の中の一冊。大判の本で絵が多く、文章は1ページに数行くらいなので、ストレス無く読み進められると思います。やや難しい言い回しなどがありますが、初級レベルの方でも、絵の助けを借りながら十分内容がとれるでしょう。今回のお話はHARRYに同情の余地ありですよね。騒動を起こしたと言うより、アクシデントで騒動が起きた感じですから。

 

                 とおるメモ

Gene Zion著の50年以上に渡って愛されている人気シリーズです。このシリーズは内容に連続した部分が全くありません。つまり前の本にあったエピソードが今度の本に出てくるといったことがないのです。ということは、どの本から読んでも、また、どれか1冊だけ読んでも全然問題がないということです。ですのからもし、全巻読破しよう!と言う時にはー

No Roses For Harry (Mini Treasure)

Harry the Dirty Dog  

Harry by the Sea

Harry and the Lady Next Door (I Can Read Level 1)

これは難易度順なのですが、こんな順番で読むのも良いかもしれません。

 

どうしてこんなに人気があるのか私なりに考えてみると、それはこのシリーズの芯の部分が全作品を通して一貫しているからではないかと思います。

私のHarryの印象は、一言で言うなら”天真爛漫”です。Harryは徹底して「好きなものは好き、嫌いなものは嫌い」です。Harry the Dirty Dogでは「お風呂が嫌い」、No Roses For Harry では「プレゼントされたセーターが嫌い」、Harry and the Lady Next Door (I Can Read Level 1)では「お隣の女の人が嫌い」、Harry by the Seaでは「暑い日差しが嫌い」です。Harryは嫌いなものからは逃げ出すか、何とか排除しようとします。決して「嫌いなもの」を頑張って好きになろうとはしません。

このシリーズは小さな子供向けに書かれているので、いろいろな制約があり、話がシンプルになるのは分かりますが、それでも「それからHarryはお風呂が大好きになりました」「そのプレゼントを大切にするようになりました」「お隣の女性と仲良しになりました」「暑い日差しも良いなと思うようになりました」という、学校の道徳の授業のようなエンディングも可能だったはずです。

しかし、このシリーズを通してHarryの「好き」「嫌い」は決して変わりません。中でもHarry and the Lady Next Door のエンディングは”小さな子供向けに書かれた本”としてはかなり辛口な終わり方だと感じます。何だか「ヤッター!苦手な上司が異動で転勤することになった。」みたいな、大人の現実にありそうな場面を思い浮かべてしまいました。

こんな風に子供向け作品だからといって、きれい事・理想論でお茶を濁すことなく、HARRYが「自分の気持ちにまっすぐに生きている」ところに読者は惹かれるのではないでしょうか。

そういえば、この作品のイントロの定番ー"HARRY was a white dog with black spots"

これは、ひょっとしたらHARRYが「白黒ハッキリつける犬」ということを暗示してるのかもしれませんね(笑)。

 

 

*この本には邦訳があります。

うみべのハリー (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)